「ランチタイムセミナー~検証1997年・ペルー日本大使館公邸人質~」

  劇団ジャブジャブサーキット第60回記念公演2019.4.28 18時半 ザ・スズナリ

 サブタイトルにもあるように1997年丁度地球儀では日本のほぼ反対側にある南米・ペルーで起きた事件であり、当時のペルー大統領は日系のフジモリ氏であった。日系人が大統領になったということで、政府、マスコミこぞって大騒ぎをしていた。公邸を占拠したゲリラたちと人質となった人々との間にストックホルム症候群が出るのではないかとの情報が、週刊誌などでは騒がれていたように思う。自分自身はこの事件から余り時を隔てずに西アフリカのギニアビサウに入っていたし、丁度リアルタイムでは、知り合いが週刊誌の記事を書く為に現地入りをするというので色々アプローチしている話は聞いていた。だが、1次情報を現地で仕入れるまで事実を言うことができないことは、無論である。そして、自分が11月末にギニアビサウに入りプロジェクト具体化の為に奔走し、資材調達の準備や発注、地元アフリカの業者との折衝などを済ませた後、所長と共に発注資材の検査の為にヨーロッパ諸国に出張中の4,5月にギニアビサウ軍によるクーデタが起き、外務省が危険度5を出したので出張中の我々は現地に戻れなくなってしまった。無論、現地に残っていた日本人スタッフや現地企業トップなどとは使える通信手段を総て用いて連絡を取り合ってはいたが、予断を許さない状況であることは百も承知である。一方、日本本社や、関係商社に問い合わせても有効情報は得られない。それどころか、本社は、日本と同じ感覚で不可能なミッションを要求するのみであった。日本大使館は話の外、というのも日本大使館から我々に情報提供を依頼してくる有様であったから。1次情報は錯綜しているし、現地業者も難民化していたりするので連絡が途絶えがちであった。首都の一等地に偉そうに最も大きな大使館を建て親分風を吹かしていたアメリカ大使館員は、砲弾か何かが着弾したら、真先に逃げ出した。そりゃそうだろ、大した地下資源が在る訳でも無ければ即手足として利用できる有用な存在が居るのか、それが本当に分からないという情況下、金儲けに繋がる事象にしか興味の無いアメリカがリスクを負う訳は無いからである。

 閑話休題。今作の執筆に使われた資料は、共同通信社が出した「ペルー日本大使公邸人質事件」だが、特殊部隊が突入した際、関連書類等は消失したとも隠されたとも言われ、謎の部分が多い為、事実は判然としない。然し乍ら、全員が虐殺されたゲリラの相当部分が、貧しい家計を助ける為に2週間雇われるというアルバイト感覚でリクルートされた若者達であり、中には若い女性も混じっていたのは事実。一応、銃器の扱い方などは学んだものの、プロというには余りに幼い者達が多かったこともあり、今作で描かれているようなゲリラVS人質というよりずっと人間的なコミュニケーションが成り立っていた模様である。それだけにフジモリの判断は余りにあざとく無慈悲であると感じられた。中南米の歴史を繙くまでもなく、1492年にコロンブス西インド諸島に到達して以来、スペイン・ポルトガルによる植民支配、加えて現地人が免疫を持たない病と植民者サイドの被植民者酷使による死亡によって現地人が激減するとアフリカからの奴隷を入植させプランテーションでこき使った歴史に、英・仏・蘭等の海賊行為やスペイン・ポルトガルへの攻撃などと並行した約300年の植民地時代の中で、スペイン系(副王・スペイン王に任命されたスペイン貴族、オイドール・スペイン国王任命議員、クリオージョ・現地生まれのスペイン人。当初、政治的権力無し)と現地人との混血であるメスティソ、アフリカ系逃亡奴隷シマロン(海賊の手助けなどもした)、白人と黒人の混血であるムラートなど混血が進んでいることに加え、混血している者同士の子孫もいる訳だから、人種混交の実態は極めて複雑であり、支配層と被支配層の差別・被差別も錯綜している。とはいえ社会を構成する要素として人種が大きくものをいう実態を知っておくことは極めて重要だから以下そのアウトラインを雑駁であるが記しておく。最上位には、白人・その下位に初期スペイン統治下ではクラカ(先コロンブス時代の首長)下っては、メスティソ、更に下にムラートや現地先住民というのが極めて大ざっぱなイメージだろう。当然のこと乍ら、貧富の極端な差もこのヒエラルキーに準じて存在し、貧乏人が這い上がることは殆ど不可能である。今作でも出てくる日本のカップラーメンを食べた現地ゲリラが「こんなにおいしいものを食べたことが無い」という科白や、2週間経てば故郷に帰ることが出来ると考えてお土産にカップラーメンでバッグを一杯にしていた話などは心底胸を撃つ。こんなに素朴で、貧しさ故にゲリラ化した貧民を虫けらのように全員虐殺した権力者というのは、その無慈悲が何処から出てくる何を根拠にしたものなのか? この判断を下した人間は怪物ではないのか? と問いたくなる作品であった。

知り合いから案内が届いたのでお知らせします。

すでに、新聞・テレビ等で報道されているように、現在、封鎖下のガザから現在、パレスチナ人画家3名が来日中です。
その画家のみなさんを、27日(水)、京都大学にお招きして、公開講演会を開催いたします。

*東京でも、東京大学東洋文化研究所本郷キャンパス)のロビーにて、彼らの作品展を開催中です(3月7日まで)。
28日(木)には、東京大学本郷校舎に作家の徐京植さんをゲストに、画家たちのギャラリートークがあります。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=WedFeb201410392019

以下、27日の京都企画の詳細です(拡散歓迎!)

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アーティストブリッジ2019 in 京都
封鎖に抗して ガザ・アーティストは語る
     2月27日(水)
  京都大学 吉田南キャンパス
人間・環境学研究科棟 地下講義室
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イスラエル占領下のパレスチナガザ地区が完全封鎖されて、まる12年が経とうとしています。
現在、200万以上の住民たち(その7割は、71年前の民族浄化によって故郷を追われた難民たちとその子孫です)が、12年もの長きにわたり、世界最大の野外監獄と化したガザに閉じ込められて、人間らしく生きる権利を奪われています。

4年半前の2014年の夏には、ガザは51日間に及ぶ、ジェノサイドとも言うべき攻撃に見舞われて、2200名以上の人々が殺されました。
(うち500人以上が14歳以下の子どもたちでした。)

攻撃から1カ月半後の2014年10月、ガザから、パレスチナ人権センターの代表で弁護士のラジ・スラーニ氏をお招きし、京都大学で講演会を開催しました
*その時の動画はこちらで視聴できます。

https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/rajaslani 

あれから4年。
環境はさらに悪化し、社会全体が精神を病み、自殺を最大の禁忌とするはずのイスラーム社会のガザで、ここ数年、自殺者が劇的に急増しています。
もはや自殺して地獄に堕ちることと、ガザで生きることに何の違いもないからです。

その完全封鎖下のガザから、このたび、3人のアーティストが来日しました。
ガザを出ることができたということ、それ自体が奇跡のいま、多くの困難と障壁を乗り越えて実現した、まさに奇跡の来日です。

世界から隔絶され、世界の忘却と無関心のなかに打ち棄てられているガザの声を、ガザの人々の《肉声》を通して世界に伝えたい、ガザと世界を、私たちを、つなげたい——そのような市民の想いで、3人の来日と作品展が実現しました。

呼びかけたのは、20年以上にわたり、占領下のパレスチナレバノンパレスチナ難民キャンプで難民の子どもたちの絵画指導をおこなってきた画家の上条陽子さん(1937年-)をはじめとする日本のアーティストたちです。
(来日した3人の画家のうち2人は、上条さんの教え子です。)

彼らの来日は、日本のメディアでも報道されています。
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190219/k10011820611000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_003

朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/DA3S13900374.html

奇跡の来日を遂げたガザの3人のアーティストを京都大学にお招きできることになりました。
27日(水)18:00〜、講演会を開催し、ガザの人々の思いを肉声で語っていただきます。

そして、3人のお話をより深く理解するために、2部構成にして、第1部(16:00〜)では、ガザで支援活動をおこなっている日本のNGO、日本国際ボランティアセンター・スタッフの渡辺真帆さんに、ガザの現況についてお話しいただきます。

市民の力で実現したこの「奇跡」が、私たちにできることは、まだまだたくさん、あるということを示しています。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
世界を変えるために、私たちに何ができるのか、ともに考えましょう。

以下、プログラムの詳細です。
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アーティストブリッジ2019 in 京都
封鎖に抗して ガザ・アーティストは語る
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【日時】2019年2月27日(水)
第1部 ガザの現況報告 16:15〜17:30(16:00開場)
第2部 封鎖に抗して ガザ・アーティストは語る
    18:00〜21:30(17:30開場)

【会場】京都大学 吉田南キャンパス 人間・環境学研究科棟 地下講義室
*吉田南キャンパスは、時計台キャンパスの南側のキャンパスです。
*キャンパスマップ↓
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r_ys.html
 人間・環境学研究科棟は、89番の建物です。
 ピロティを挟んで東側(大文字側)、ガラス張りの建物の地下です。

【言語】アラビア語、英語(日本語通訳あり)

●入場無料、事前申し込み不要(どなたでもご参加になれます)。

【プログラム】
第1部 ガザの現状(最新報告)16:15‐17:30
16:00 開場
16:15 開演 主催者挨拶(おか)10分
16:25 講演「完全封鎖下のガザの現況」
       渡辺真帆さん(日本国際ヴォランティアセンター)
17:15 質疑応答
17:30 終了
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第2部 封鎖を超えて ガザ・アーティストは語る
17:30 開場
18:00 開演
      主催者挨拶(岡)
      招聘団体挨拶(「アーティストブリッジ2019 ガザのアーティストを支援する交流展」)
18:15 封鎖下のガザ 現況(渡辺真帆)
18:30 動画紹介(12分)
      アーティストトーク
       ガザの状況、封鎖下の生活、アートとは何か 
20:15 休憩
20:30 私たちに何ができるか
      質疑応答
21:30 終了予定

通訳:渡辺真帆、佐藤愛

【プロフィール】
ムハンマド・アル=ハワージュリー Mohammad Al-Hawajri
1976年、ガザ、ブレイジュ難民キャンプ生まれ。ガザの現代アーティスト集団「エルティカー」創設メンバーの一人。国外の多くの国から展覧会に招待される。作品はコレクションされている。

■ソヘイル・サーレム Soheil Salem
1974年、ガザで生まれる。「エルティカー」創設メンバーの一人。アル=アクサー大学美術学士号取得。フランス他、国外から招待出品。

■ラーエド・イーサー Raed Issa
1975年、ガザのブレイジュ難民キャンプ生まれ。国外でも活躍。イタリア・ローマの国際美術賞を受賞。「エルティカー」メンバー。

パレスチナ・ガザの画家3人展(アーティスト・ブリッジ2019巡回展) 

 ガザのアーティスト達3名が難題を乗り越え来日、群馬県前橋にある広瀬川美術館を経由して横浜関内のGALLEY SHIMIZUに戻ってきた。昨19日に1回、23日にもう1回3名の画家によるトークと展覧会がある。アーティストトーク参加には500円必要だが、通訳がつき、質疑応答が可能。

http://www.frame-shimizu.jp/index.html

 更に2月28日16時頃から(時刻は凡そ)は東京大学東洋文化研究所1階ギャラリーでトークあり。因みに東文研は本郷校舎、懐徳門を入って10m強直進、右手の獅子像のある建物。

 

巡回展

パレスチナ・ガザの画家を支援する交流展

GALLERY SHIMIZU

2019.1.25(金)~1,29(火)11:00~18:00 最終日16:00 会期中無休

1:25 16:00~オープニングレセプション

1.26 14:00~ギャラリートーク 徐 京植さん予定 16時~ワインパーティー

〒231-0033 横浜市中区長者町5-85三共横浜ビル1F

Tel:045-251-6177

http://www.frame-shimizu.jp

 

*巡回展での展示はパレスチナのアーティスト3名の作品約50点のみの展示以下同

 

アーティストブリッジ2019巡回展 パレスチナ・ガザの画家三人展

広瀬川美術館(国登録有形文化財建造物)

2019.2.1(金)~2.10(日)11:00~17:00 月・火休館 入館料500円

〒371-0022 前橋市千代田町3-3-10

Tel:027-231-7825

http://www.hirosegawamuseum.sakura.ne.jp/

 

巡回展

パレスチナ・ガザの画家を支援する交流展

GALLERY SHIMIZU

2019.1.25(金)~1,29(火)11:00~18:00 最終日16:00 会期中無休

1:25 16:00~オープニングレセプション

1.26 14:00~ギャラリートーク 徐 京植さん予定 16時~ワインパーティー

〒231-0033 横浜市中区長者町5-85三共横浜ビル1F

Tel:045-251-6177

http://www.frame-shimizu.jp

 

*巡回展での展示はパレスチナのアーティスト3名の作品約50点のみの展示以下同

 

アーティストブリッジ2019巡回展 パレスチナ・ガザの画家三人展

広瀬川美術館(国登録有形文化財建造物)

2019.2.1(金)~2.10(日)11:00~17:00 月・火休館 入館料500円

〒371-0022 前橋市千代田町3-3-10

Tel:027-231-7825

http://www.hirosegawamuseum.sakura.ne.jp/

パレスチナ・ガザの画家を支援する交流展」2019年1月17日~1月22日アーティストブリッジ2019が、JR相模原駅ビル4Fの相模原市民ギャラリーで開催されている。招聘されているガザ在住の画家3名は懸念された通り、イスラエルの出国許可が未だ出ていない為、来日できるか否かも分からない。然し発送された彼らの作品群は無事届き、昨日から展示されている。開催期間が僅か6日間と極めて短いものの、彼ら3名の実に味わい深く、生の実質を溢れ出させる作品群を支援する日本在住のアーティスト達の作品群もレベルの高い個性的な作品群であり、作品数という点でもその質の高さでも見に行って納得のいく展覧会だ。会期中は、講演や映画の上映などもあるのでこちらも是非申し込んで欲しい。

1月18日14:00~15:40映画「オマールの壁」上映&トーク

1月20日14:00~16:00講演「パレスチナとは?」「ガザとは?」講師:徐 京植

1月21日14:00~16:00 映画「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」 上映&トーク 監督:古居 みずえ

  相模原市民ギャラリーHP:http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kankou/bunka/gallery/index.html

アーチストブリッジ2019 パレスチナ・ガザの画家を支援する交流展

https://blog.goo.ne.jp/jannmu/e/a2bc6ca6c09c4a768167f8042caa0fe2

尚、関連する巡回展については後程追記する。

「LaLa-bye!!」2018.11.18 17~La Grotto

 演じた女優さんが脚本も書き、出演もしている。構成・演出が良いのは、朧の末原 拓馬の協力のお蔭かも知れない。何れにせよ、あの狭く、乏しい機材しかない空間で、よくぞこれだけの作品を提起してくれた。新たな才能に出会えて幸いであった。

 小屋は駒込の住宅街の一角にあるラ・グロット。背凭れのない丸椅子を20脚も並べれば一杯になってしまう小さな空間だ。小屋入口対面には、右下がりに階段があり、入り口、対面それぞれの階段を降り立った床部分が演技スペースと客席になる。尤も対面の階段下の三角の空間は、工夫次第で何かになる。今作でも、この空間は、サブプロットに関わる形で用いられており、デッドスペースになっていない。賢い使い方だ。入り口下手を除いて三方の壁には、色とりどりの布きれが三角形を構成する3辺のうちの2辺や、中を丸くしたリボンなど様々な形に貼り付けられて踊っている。暖色系が多いのは、創作者の温かい心と自由で快活なイマジネーションの働きを示している。観客から見て対面の階段を上り切る少し手前の手摺には、シーツよりやや厚手の布が掛けられ人形を演者が用いる時には演者の身体の隠れ家になり、影絵で表現する際にはスクリーンとして機能する。これだけでも、少なく貧弱な器具を用いて大きな効果を上げている点で見事だが、照明や音楽の用い方も非常に的確で上手い。また人形を操る際には、生身の身体が発する科白と人形の発すべき科白(録音音声が用いられる)との組み合わせ、発語のタイミングがぴったりで感心させられた。先にも述べた通り、貧弱な音響・照明設備の使い方も素晴らしい。

 無論、独り芝居で何役も演じる演者の技量も高い。この7年程の間に、演劇サイトでは発表していない作品を含めると2500本程の舞台を拝見しているが、一目見て、上手いと感心した。小さな小屋に相応しい声量、滑舌の良さ、間の取り方、身体をどういう向きで観客に見せるかや身体の処し方、表情の作り方などを総合して実に良い演技なのである。

 ご本人が書いている戯曲も普遍性を持つと同時に、観客の心の流れを読み取ってでもいるかのようだ。次元を変えて進展させるべき所では、そのように描いている。凡庸な作家は、必ずこのような場所でつまずく。この意味で戯曲家としても才能の輝きを放っている。作品が押し付けがましさを感じさせぬ形で普遍性を持っている点も素晴らしい。

作品解説は以上だ。これは、コリッチという演劇サイトにも書いた。以下は、このブログの為の文章である。

独り芝居だから総てが出る。それで、この女優の素晴らしさは一体何が原因なのだろう? と考えてしまった。答えが出るのに2日間を要した。感覚したものを如何に言語化するのかに若干の時間を必要とした。その結果、彼女の素晴らしさはバイアスを掛けずに世界と向き合っていることだと結論づけたい。この態度が一種の透明感のようなもの、純粋性のみが持つ、本質へのダイレクトなアクセスと充全な交感を可能にしており、彼女の豊かで本質的な表現の源泉を為しているのだ。