「タブーなき世界そのつくり方」

 

 ヘレン・ケラーとアン・サリヴァンを中軸に展開する物語だが、前回(2018.9月上演の「Optimism」)はヘレンの台詞回しが観客に理解されやすいことに主眼を置いて創られていたのに対し、今回は彼女の努力によって徐々に発話能力が高まってゆく方向へ舵を切っている。アン役は松本 紀保さん。紀保さんはかなり大柄でその分押し出しも強いが、ヘレンを演じる羽杏さんは華奢で小柄とはいえ気圧されることもなく、ヘレンの個を演じる所は流石である。乳母ヴィニーや白い肌ではあるが、黒人の父母を持つピーターの受難もショッキングではあるが、実際に行われて来た蛮行であり、ヴィニーの弟も、ピーターの父も白人の凄惨なリンチによって殺された、(その有様が如何様なものであるかは、リリアン・スミスの小説「Strange Fruit」や同名のタイトルでビリー・ホリデイが歌った歌でも有名)ヴィニー自身、黒人は入ってはならぬなどの差別を受ける、これらの理不尽に立ち向かうヘレンの勇気と偏見の無さ、その絶え間ない努力と人間としての偉大に勇気を貰った。

 上演は2020.2.12~16日まで新宿サンモールスタジオで詳細は以下

https://stage.corich.jp/stage_main/84967