秋野 紗良New Albumリリースライブ

  アルバムタイトルは“わたし 幸せです”(CDは全11曲入り、ライブは約1.5倍の曲数を歌ってくれた)。余り昏い時代にマッチしないと感じる人々も居るだろうが、お姉さんが芸大でチェロの非常勤講師を学生時代からやっていたほどの演奏家だった関係で年中芸大に行って生演奏や声楽を聴いていた自分の友人が、人の声程美しいものは無いと常々言っていたことが納得できる程の声を持つ逸材である。序盤緊張してガチガチになっていたが、その美声は、音楽の妖精が舞い降りた如く、聞き惚れてしまった。

 本当は11月20日、つまり今日コンサートをしたかったそうだ。亡くなった父上の誕生日だから。父母の愛をたっぷり受けて育った彼女のプロフィールは、以下の通り。

父上はピアニスト、母上はシンガーだから音楽に包まれて育った。5歳の時、東京から母の故郷、秋田県大館市へ家族で移住。10歳からコーラスを習い始め、中学時代は合唱部に所属。17歳の春に父上が他界したのを機に、アーティスト活動開始。高校卒業後、視野を広げるため、また美しい日本を知るために、徒歩で旅をしようと思い立ち北海道を回る。 

 自分も彼女と同年代の頃、日本半周ヒッチハイクをやった経験があり、彼女の大自然に対する感受性の鋭敏なことと宇宙の広大な広がりに思いを馳せることのできるイマジネーションの広さは良く分かるような気がする。素晴らしい歌を聴かせて頂いたお礼に自分が出会った大自然の最も美しい思い出を記しておく。

高校は水産高校に行っていたので航海実習があったのだが、小笠原の南を航行していた新月の晩(月は出ていないので星明りのみになる)、自分は仲間1人とワッチ(航行の安全確保の為の見張り番)をしていた。操舵室に通常はいるのだが、自分は独りデッキに降りて、舳先に立った。余りに星の煌めきが美しく、後にも先にもあんなに多くの当(まさ)に降るような星空を見たことが無い。漆黒の闇を無数の星が煌めきで穴を穿つかのように覆う宙(そら)に対応するハズの海もまた黒々していたが、夜光虫(光を発するプランクトン)が海をかき分ける船の波立ちの央(さなか)を星の如く蠢き泡立ちながら流れてゆく。海と空の境目が分からなくなったその時、自分は銀河の真っただ中を、唯独り航行してゆくような錯覚に包まれて感動に身を委ねていた。

 彼女の経歴を記しておこう。『NHKのど自慢』(鹿角市)今週のチャンピオン。『BJリーグ秋田開会式』秋田県民歌斉唱。『歌唱王2018』秋田県代表。2019年3月で 尾藤イサオさん主演のT1プロジェクトミュージカル『幸せな時間』(東京・本多劇場)に女優として出演。6月 秋田県大館市の御成座にて『秋野紗良 SPECIAL LIVE』を敢行する。9月T1プロジェクトの Musical『殺し屋は歌わない』(東京・下北沢)で初の主演を務める。他、イギリス大使館にゲスト出演、表参道で演奏されたオーケストラの第九にソプラノソリストとして参加、高知の梶が森ロックフェス、沖縄のブライダルフェア、福島のアートライブ等にもアーティストとして参加してきた。

 今回のソロライブは3部構成。17曲。作詞・作曲を秋野さん自身が作った曲もあれば、T1プロジェクト主宰の友澤 晃一さんが作詞している曲も入っている。必聴のアルバムである。