「クロノライセンス」1mg東西同時旗揚げ公演 2018.10.11 14時 Theater Kassai

 先ず目を惹くのが白と黒を用いた舞台美術だ。様々な巾の布を用いて各ゾーンが仕切られているのだが、構造はシンメトリー。センターが凹んでいる分左右は出っ張っている訳だが、この凸凹を利用して、出捌けから出てきた役者陣が出る時も入る時も見え隠れするという単純だが面白い仕掛けが作られていて、各々の動きにアクセントがつく。他にも客席側にハの字に張られた目隠しは袖を形成しつつ出捌けも兼ねる。黒と白を用いているのは、無論話の内容に関わりがあるなど、気の利いた作りだ。

 オープニングは暁闇から明転と比較的オーソドックスだが、役者が上手い。狂言回しが、実に自然な佇まいで入ってくる。その直後、メインテーマに直結する若夫婦のシーンが入るのだが、この構成も実に上手い。この後ダンス等が入るのは、必然性が無いので自分の好みではないが、踊りも良く揃い、皆上手い点は褒めておく。東西(今回は大阪・東京)同時旗揚げ公演ということだが、演技力からみると出演者全員が既に様々な劇団で演技を磨いてきた実力者だろう。若いがしっかり基礎をやっているのは、間の取り方、演技の際の自然な身体の用い方などから明らかだ。原作があるとのことだが、脚本も随所に人生の本質や深みを感じさせる科白が鏤められ、落ち着いた中に味のある丁寧な作りで好感を持った。演出も奇を衒う所のない自然な表現を的確に引き出すことに成功している。舞台美術がシンメトリックで安定感があり合理的なことと役者達の動きがスムースなこととが、話の内容が非現実的であるにも拘わらず芝居全体に安定感を与えていることも重要な点だ。役者陣の力量は各々の演技が自然で、身体の内側から圧力を高めるような、大仰ではないがしっかり観客一人一人に届く演技をしていると言えば理解して頂けよう。音響・照明も適切である。裏方さん達の対応もグー。

 尚東京公演は10月14日まで、池袋シアターKASSAIにて